──薄明の都市、遙か彼方まで続く黄昏のスプロールを、男たちが駆けている。
《追跡開始》
スウェットやパーカーなど、彼らの格好は様々だったが──その色は一様に黒だった。その目は血走っており、顔にも生気がない。そこからは余裕とか平静とかいったものがまるっきり欠落してしまっていた。それはもはや、一般の市民の顔ではなかった。それは逃亡者の顔だった。
彼らの手には、血に濡れたカッターナイフや、ガムテープが握られている。
《対象捕捉》
──と次の瞬間、坂を下りきった男たちは、カーブミラーの頂点に取りついた「それ」と目が合った。
「ヒィ……ッ!」
「それ」は、四つのバイオ・アームと球体の大脳を持った機械「デウス」だった。その側面には「六菱重工」を示すロゴが刻印されている。
「うわあああああッッ!」
叫び、男はカーブを曲がって幹線道路の方角にある、貸し駐車場へと走った。全力疾走だ。一方、デウスはそれを追わない。ただ透徹した機械の眼でそれを見据えている。
《DNA解析完了》
《プラント起動……生成完了》
《志向性局部麻酔型ナノマシン散布開始……散布終了》
──男たちは走っている。
「もうすぐだ、走れ! ワゴンに乗りゃこっちのもんだ!」
先頭の男がそう叫ぶ間にも、彼の視界に写ったワゴンはどんどん大きくなっていく。接近しているのだ。
──と、ふと、彼の視界から、ワゴンが消えた。それだけではない。宙に浮かぶ料金所の拡張表示も、LEDの街灯も、昇りかけの太陽すらも、彼の眼には写っていなかった。写っているのはただ一つ──地面だけだった。
男たちはさながら糸を切られた操り人形のように地面に崩れ落ちていた。
そんな彼らの前に、車が二台、停車する。大型のバンだ。無骨な作りの、どこにでもありそうな車だが、それは社用車だった。側面に刻印された表示は「大原民間警察株式会社」と読める。
《西暦二〇六三年九月二十四日、午前五時五十三分。登録コードAN600041:「佐藤浩」以下五名を現行犯逮捕しました。罪状は強盗殺人。逮捕協力を行った企業は順に──》
デウスが、自動生成されたお決まりの文言(テンプレート)を叫び続ける中、バンから降りた大原民間警察の実働部隊は、慣れた手つきで犯人たちを拘束し、車に乗せて運んでいった。
──時は西暦二〇六三年。今や文明のあらゆる営為は外部化され、そして自動化されつつあった。
二十一世紀初頭から、先進国の人類は減少していく一方だった。
都市そのもののもつ病質のゆえなのか、あるいは生物そのものが過剰な繁殖を拒むように設計されていたのか、それは今となっては分からない。だが、事実としての人工減少は、経済界にとっては人的リソースの減少を意味した。
その穴を埋めるようにして台頭したのが、人工自動化技術(アーティフィシャル・テクノロジー/AT)である。
一介の情報処理機構(プロセッサ)に過ぎないAIだけでは、行使する主体としての人間存在から独立して活動することはできない。だが目的をあらかじめ書き込まれた身体(インターフェース)を前提としたAI開発技術の登場はその問題を解決し、文明を自動化させるに至った。
〝企業のネットが星を覆い〟──などという表現は、そこではもはや意味を成さない。今や複数の企業体によって維持・強化されているATの作り出すネットこそが星であり、世界のすべてだからだ。
その男──引き締まった身体に、苦労をたたえた深い皺の刻まれた三十代後半の男、岩代柳(いわしろやなぎ)はコーヒーを啜り、ソファに身体を預けると、指輪型のデバイスを起動し、空中にウィンドウを表示した。コンマ一秒以下のロード時間が終わると、映像が再生されはじめる。
《世界六十ヵ国で承認決定! タイニー・グラス社のバイオ・ボットが、あなたの生活を守ります! 家庭向けのプランは──》
──画面が暗転し、再び点滅する。動画がスキップされたのだ。
《暮らしを、守る。国を、守る。ヤマサキ民間警察(プライベートポリス)》
──再び画面が切り替わる。無論先刻と同じ処理だが、心なしか、そこにはある種の苛立ちが表れているようにも見えた。
《日本統一労働党は、アイギス高次意思決定システムを導入しています。協賛企業は、PILロボティクス、六菱重工、山崎製作所、その他二十三の企業、グループとなっております。次の選挙では是非──》
──再び、画面が切り替わった。だが次に出現したのは、うんざりするような、画面の質だけは確保されているくせにろくな内容のない広告ではなかった。
《昨日、都内で発生した殺人事件について、初動捜査を担当したパニッシュド・ヴェノム・プライベートポリス(PVP)社は、警視庁本部に第六号要請を行い、これを受理されました。これにより警視庁は捜査本部の設立を決定。今日中にも協力企業の募集が開始される見込みです》
青を基調とした画面構成。全身に「誠実さ」のラベルが貼り付けられたかのような務め人風の男性。それはニュース番組だった。尤もテレビ会社は軒並み倒産や合併によって消滅したため、製作しているのは複数の映像関係会社による連合体なのだが。
と、画面が番組のセットからインサートに切り替わった。それと同時に映像が停止し、画面いっぱいにモザイクと、ポリシー・ガイドラインを記したセンシティブ設定の拡張表示が浮かび上がる。
「…………」
一つしかめ面をすると、岩代は手元の薄型端末を操作し、表示を消滅させた。それで、モザイクの向こうの情報が露わになる。
それはおよそこの世のものとは思えない死体だった。四肢を切り離された、薄っぺらの遺体は、火傷のレベルを推定するのが馬鹿馬鹿しいほどに強く、深く灼かれている。それは、かつては警察関係者か、あるいは法曹関係者でなければ絶対に見ることのできなかった「現実」の姿であった。
情報公開義務と精神衛生保護義務の狭間に立たされた二十一世紀中頃の企業たちが選んだのは、完全なる情報の公開と、過保護なまでのフィルタリングの義務化だった。あらゆる残虐な情報を公開する一方で、あらゆる情報にフィルター処理を施すこと。それがこの未来のスタンダードであった。
しかし結局のところ、その画像はあまりにも刺激が強すぎたのか、ものの数秒で別のイメージ映像に切り替わった。尤も、だからといってその鮮烈さが消えてなくなるわけではない。
彼は画面を付けっぱなしにしたまま、立ち上がった。そうして扉の方に向かうと、一旦外に出、ドアノブにかかった木札を裏返した。それで表示は「CLOSED」から「OPEN」に変わる。無論開業状態の有無は地図情報に紐付けられたタグで確認できるため、この行為に社会的な意味はなかった。癖のようなもので、開業してから三年、彼は欠かさずこれをやっている。
そうして、彼は再び室内に入っていった。その一瞬、彼の視界にデバイスの地図情報拡張表示として「岩代民間警察事務所」の文字が躍った。
それが消えると同時、視界に着信を示すウィンドウが立ち上がった。それで彼の弛緩した表情は引き締まる。
「──はい、こちら岩代事務所」
『久しぶりだな、柳警部──いや、今はそんなせせこましい肩書きなどは負っていないのか』
その言葉に──否、その声に、岩代は眉をひそめた。それは訝しむ、と言うより、嫌悪している、と言った方が良いような、激甚にして人間的な反応だった。
「田角(たずみ)さん──田角警視か?」
『五年ぶりになるかな』
「警視庁が、今更何の用だ。もうあんたは上官でも、そして仲間でもない」
『それはないだろう。官民連携、という言葉を知らんわけではあるまい。民とは国であり、国とは民なのだよ』
「お為ごかしだ。あんたらの怠慢を誤魔化してるだけだ」
『あんたら、か。古巣に対して随分冷たいんだな』
そこで、岩代はため息をついた。会話の幼稚さに目眩がするようだった。これではまるで小学生だ。
「……言い争いをしたくて電話したわけじゃないだろう。要件は何だ?」
『都内で発生した猟奇殺人事件については知っているな?』
それで、岩代は瞠目(どうもく)した。
「おい、まさか──」
『その捜査チームに、君も加わってもらいたい』
どさりと音を立て、彼はソファに腰掛けた。身体を投げ出した、と言った方が適切かもしれない。
「いいか、善し悪しはともかくとして、官僚が人手不足なのは知ってる。民営化が必然だってことも。だが、これはないだろう。殺人だぞ。しかも現行犯でも、初動捜査でも挙げられなかった犯人だ。どう考えても、俺に務まるような仕事じゃない」
『謙遜だ。この国に、君よりも能力のある民間警察は存在しない』
「大手に頼め。俺は個人(フリーランス)だ。こう言って良ければ無頼者(ノーマッド)でもある。とてもじゃないが──」
『話を聞いていたか? 捜査はチームで行う。既に我々はユービック・プライベートポリス(UP)社とその傘下の企業に協力を要請している。君は彼らのバックアップを受け、実地で捜査を担当するのだ』
「あんたこそ、自分の言っていることが分かっているのか? 現代では、あらゆる捜査行為が外注される。鑑識も、科学捜査も、聞き込みにしても例外じゃない。そんな中で、なぜ俺なんだ。なぜ、敢えて俺が」
遮るように、田角は口を開く。
『……君は、知りたくはないかね。あの惨たらしい死体が、いかにして生まれたのか。何者によって生み出されたのか。そこにあるのは狂気か、あるいは正気なのか?』
「……くそっ」
毒づき、岩代は電子タバコを取り出すためにポケットをまさぐり──禁煙中だったことを今更ながら思い出した。電気刺激の依存性が告発されてから五年、締め付けは厳しくなる一方だった。かつて、実体としてのタバコがそうであったように。
この依頼を、断るわけにはいかなかった。彼は、彼の魂はそれを欲していた。警察を辞め、フリーランスとして都市の片隅に逃げ込んでもなお、彼は「警察官」を降りることだけはできなかったのである。
「分かった、それで……俺はどうすればいい」
『捜査資料は共有する。だが、他の人間と顔を合わせる必要はない。好きに動け──それが解決への近道だ』
それを最後に、通話は切れた。番号は見たこともないものだった。捜査協力企業を「公募」している手前、警視庁の公式の番号でかけるわけにはいかなかったのだろう。
岩代は立ち上がった。警察官として。真実を追う一人の中年として。
─◇◆◇─
東京都外縁特区A地域。東京湾に浮かぶ広大なウォーターフロントの一角に、それはあった。
二〇三〇年代の後半から、移民やその他外国人を受け入れるために建造された外縁特区の人工の大地は、スプロール、という言葉では形容しきれないほどに雑多で、過密した都市をその腹に抱えていた。センチ単位で所有される土地からは尖塔のようなビルが競って伸びており、それらは無数のパイプとケーブルによって繋がっている。さながら動脈のようにこの都市に張り巡らされたそれは、何も情報や電力などのインフラを交換するためだけのものではない。人もまた、そのパイプを通じて移動する。土管のような大きさのそれは、ここでは立派な交通インフラなのだ。
件の猟奇殺人が発生したのは、そうした都市の一角だった。
床に落ちているタバコの吸い殻や錆び付いた注射器を避けながら、岩代はカラーテープをくぐり、その部屋の中に入っていった。
川崎の歓楽街をのぞむ集合住宅の一室。無数のモニターとハードディスク、そしてその周辺機器が所狭しと並べられたその部屋の中央には、白く、人型が縁取られている。
無論、それはデバイスの視覚支援機能が見せる拡張表示だ。それはデジタルで再現された痕跡だった。惨劇の痕跡。今ここでは、デジタル情報だけがその過去を示していた。ふと視線を上に向けると、そこでは捜査をバックアップしているUP社のものとおぼしき「デウス」が忙しなく動き回っているのが見えた。この部屋の情報を収集・記録しているのだろう。
部屋は綺麗なものだった。インテリアもそのレイアウトも、この街の住人の範疇を出ない、ごく普通のものにすぎないうえ、そのどこにも、返り血はおろか肉片すら付いていない。犯人が自身の痕跡を消す際に一緒に消えたのだろうが、その空白、沈黙、情報の静謐(せいひつ)には、何か不気味な、薄ら寒いところがあった。
「…………」
岩代は眼を細め、窓の横に立てかけてあった本棚に視線をやった。無論、本のラインナップもまた、ありふれた、どこにでもあるものにすぎない。日本語、あるいは日本文化についての教材。
この街に住むものたちにとって紙の本──特に和製のもの──は、娯楽としてはあまりに異質に過ぎるうえ、高価でもあった。とはいえ、中古であれば話は別だ。かつて大量に刷られた本の多くは、ホワイト・カラーの労働者が昼に飲むコーヒーよりも遙かに安い値段で払い下げられており、その大部分が、こうした移民たちの手に渡っているのだ。
(……試してみるか)
意識的に数度まばたきをすると、彼は「それ」を起動した。
ナイトポーター。警察庁・警視庁が複数の企業体とともに形成した、強化追跡システムだ。プライバシー保護コードによって守られている情報や、監視会社やセキュリティ会社がサポートを切った、管理されていない情報などの、本来白日の下に晒されていないものたちの追跡・閲覧を可能にする「王の眼」である。
それにより、彼の目の前には、注視した教材に付加されたメタ・データが一挙に表示された。それを販売した古書店、引き取りを要請した人物、購入者、そしてその人物から派生した、指紋を初めとする無数の生体情報。
「処理オプション起動」
言い、彼はその膨大な情報をAIによる処理に回した。それにより追跡可能な痕跡がリストアップされ、優先度(プライオリティ)が査定され、その順に捜査協力のピックアップ・アンケートのフォームが整備される。後はそれをUP社の事務担当者に回し、承認が得られれば、自動的に関係者の元にアンケートが送られるだろう。
電子化された聞き込み。今や一般的になったそれは有効ではあるが、しかし、決定打にはなりえないことが多いのだった。
そもそも、現代では実際に「捜査」が行われることはほとんどない。ATのネットによる管理の内側で起きた事件は、すべて発生直後に「デウス」が処理するからだ。そしてそれが間に合わなければ、近場に拠点を置く企業が初動捜査を担当するが、それで八割方の事件は決着が着くようにできている。
そんなシステムが取り漏らした事件を追うことは困難だ。デウスを、そして初動捜査をすり抜けた犯人というのは、町中に張り巡らされた監視会社のカメラや、警備会社の管理網をもすり抜けている。そんな彼らにとって、人目を避けることなどはわけないことだろう。
とはいえ、AIによる絞り込み捜査は、「犯人ではない個人」を発見することには役立つ。全く無駄というわけではないし、現にそれで解決した事件もある。だが岩代は、そうしたシステムの盤石を完全に信頼しきってはいなかった。
「……来たか」
言い、彼は錆び付いた窓を開け放った。それで強風とともに、目当てのものが飛来する。
それはスカイ・クラフトだった。空圧とプロペラによる揚力、各種電子制御によって浮遊する「空飛ぶ車」──尤も、それは最低限の武装を備えているため「装甲車」と言った方が適切なのだが。
「よう、岩代!」
ビルにスカイクラフトを横付けし、上部のハッチから出てきた男は叫んだ。
「マクシム」
マクシム・ジスカール。情報屋のフランス人だ。日本国籍を持っており、電子諜報(シギント)の世界で、フリーランスとして活動している。
岩代は窓から身を乗り出し、ハッチを通してスカイクラフトの中へと入った。
車内は意外にも整頓されていた。複数のモニターが整然と並ぶデスクに彼が腰掛けたのを確認すると、マクシムは口を開く。
「依頼通り調べておいたぜ」
言い、彼はモニターを切り替える。それで、画面に無数のウィンドウが出現する。それらはすべて、タイムラプスに編集された映像だった。
「この近辺のカメラは大体全部ダメだな。特に不審な奴はいない」
「犯人が全員不審かと言われればそうでもないが……しかし、これで衝動的犯行の線は消えたな」
その言葉に、マクシムは頷いた。
「間違いねえ。こりゃ相当なやり手だ。計画的犯行──システムの穴を突こうってな気骨を感じられる奴は久々だ。だが……」
そこで、彼は言葉を切った。
「どうした?」
「ちょっと妙なんだよ」
言い、彼は画面を切り替えた。変わって映し出されたのは、異様に細かい個人情報の束だった。
「こいつだ。住宅会社に登録された被害者の個人情報なんだが……なんつーか、ブレがあるんだよ。カメラの捉えた現実と、この情報との間に」
「……というと?」
「こいつは遠隔でずっと業務をやってることになっている。そんでもって、移民達の多くは合成食料で日々を食いつないでるから、一日中家から出ないでいても問題はない……そう言われちゃいるが、それは嘘だ。移民に限らず、高度に情報化された社会に住む人間ってのは意味も無く、脈略もなく、外に出たがるものだ」
「そうなのか?」
「オレたちみたいに、職業でそこらを駆けずり回ってるようなのには実感の湧きにくい話ではあるがな。四六時中街を監視してると、嫌でもそれは目に入ってくる」
「ふむ……」
「だが、こいつは一切外に出ていない。そういう趣味の奴なのかもしれないが──部屋に嗜好品の類いはほとんどなかったろう?」
「まあな」
「だったら尚更、外に出ないでいることは不可能だ。破棄されてない分には大体目を通してみたが、こいつは一瞬たりとも写っちゃなかった」
「どういうことなんだ……?」
「監禁されてた、ってのが一番あり得る線だが……しかしなあ……」
現代の犯罪の多くは住宅の内部で起こる。スプロールの拡大が止まらない、というのもあるが、その一番の理由は、住宅が一種の聖域であるからだろう。
都市は公共物であるがゆえに、監視の目で溢れている。だが住宅はそうではない。個人契約の原理の、より純粋な結晶であるそこには、直接的な監視の目はない。警備会社とセキュリティー契約を結んでいたとしても、室内にカメラが入ることはないのだ。
そのため、監禁は現代においてはしばしば発生し、そして発覚の遅れる犯罪の代表格であった。
「なんつーか、こいつは本当に人間なのか? まるで……そう、これじゃまるで幽霊(スプーク)だ」
「……ふむ」
呻き、一つ息を吐くと、岩代は立ち上がった。
「引き続き調べておいてくれ。俺はちょっと出る」
「聞き込みをやるのか? ……やめとけよ、無駄足だ」
「そりゃ俺が決めることだ。あるいは近所の奴がな」
言い、岩代はハッチから外に出た。
数時間後。岩代は都内に戻っていた。地下鉄に乗り、そのまま事務所へと向かう。
『どうだ、調子は?』
と、ふと、脳裏に声が響き渡ったので、岩代は指輪型のデバイスの情報投影放射光を目に当てると、拡張現実を展開し、声の主とビデオ通話を開始した。通話、と言っても、彼が発声をすることはない。脳の発声電位の活動を体内のナノ・マシンが感知することで、肉声を再現した合成音声が彼の意思を代行するシステム。それが起動しているのだ。
相手はマクシムだった。
『やっぱり被害者を目撃した人間はいなかった。不審人物も同様だ』
言い終わるよりも早く、マクシムは鼻を鳴らした。それはほとんど嘲笑だった。
『だから言ったろう、無駄足だって』
『……そうでもないさ。それに、体裁は整えられるだろう』
『ああ、そういや今回の依頼は警視庁から来てるんだったな。いいねえ、公金で仕事ができるってのは』
『肩が凝るだけだ。それに──』
そこで、岩代は言葉を切った。
『ん?』
『あそこは魔窟だ。そこから落ちる金なんざ、綺麗なもんじゃない』
それはほとんど嫌味の響きを伴って仮想空間上に響いた。マクシムはそれを、再び嘲笑で受け流す。
『オレたちも似たようなもんだろ? 私警なんてのは、金と欲にまみれた薄汚い仕事さ。利権と結びつくのは権力の専売特許じゃない。あんたも、オレも、今の警視庁だって、同じ穴の狢(むじな)だ。違うか?』
『違いない』
『まあ無駄話はここらにしようや。とんでもねえことが分かったんだ』
そこで岩代はデバイスを操作し、画面の透明度を上げたうえで辺りを見回した。特に彼の方向を見ている者も、そして何かを探っている者も、その列車には乗っていなかった。尾行はない。それを確信すると、彼は再び通信に戻った。
『ほう?』
『今回の事件の初動捜査を担当した、PVPって会社があっただろ?』
『ああ、それがどうしたんだ?』
『前置きなしで話すぜ。いいか、驚くなよ。──この会社は、存在しない』
『……なんだって』
『だから、PVP社なんてのはこの日本にゃ存在しねえのよ。公式サイトも存在するし、ボットが管理してる連絡先にもアクセスできる。だが事務所の現住所になっているオフィスの入ってる雑居ビルは、そもそも存在しないものだった』
『……虚構だったってことか。だが、一体何のために?』
その問いかけに、仮想空間上のマクシムは何やら手元のデバイスを操作しながら答えた。
『さあな。だがこりゃ、いよいよきな臭くなってきたぜ。今なんとか取り出そうとしてる情報があるんだが……お、来た来た』
言い終わると同時、彼は空中にウィンドウを表示した。それは音声ファイルのようだった。
[もしもし、警察ですか? 死体を見てしまったんです。すぐに来てください]
岩代は、悪寒を感じずにはいられなかった。その声からは、感情なるものがまるっきり欠落してしまっていた。それはおよそ、事件に遭遇した人間の出す声ではなかった。そう、それは──機械の声だ。
『事件発覚のきっかけになった、一一〇番通報の内容だ。もう分かるよな。こりゃ合成音声だ』
『待て。初動捜査も、通報もフェイクだと? それじゃこの事件は──』
『そうだ、最初からでっち上げだったことになる。何者かが仕組んだものだ』
『だが──そんなことが可能なのか? 現にこうして、警視庁が動いている。報道各社だって、連日この事件についてうるさいくらいに報道しているんだ。それがフェイクだと?』
『国家機構の電子化は進んでいく一方だ。ハンコも、書類さえも今はもうない。すべての情報は、すべての契約は今やデジタル上で処理される。今回のPVP社にしたって、第六号要請を行う際に、警視庁の役人に会うことさえしてないだろう。だが、この社会はそれでも回るようにできてる。それがデジタル社会だ』
岩代は手すりにしがみついた。全身から力が抜けていくようだった。想像の埒外からつかの間に到来したその恐慌は、瞬く間に彼の全身を侵した。
『待て、それじゃ、死体はどう説明するんだ? あの惨たらしい死体は──』
『……あんた、もう分かってんだろ?』
そう言われ、岩代は息を吐き、こめかみに指を押し当てた。観念したように。
『解析は終わった。いちいち言う必要はないかもしれんが……そうだ、あの死体もフェイクさ』
『人間の存在を……捏造した……だと……!』
『惨たらしい、ってのが肝だな。CGIで完全な人間を再現するのは難しくても、焼死体ならある程度は可能だ。大体、その種の死体を見たことがある奴なんてそうそういない。騙すのは簡単だろう。そのうえ、そのヴィジュアルの惨たらしさが、冷静な判断力を喪わせる。専門家は社会的人格に順応することでその種の反応を消しているわけだが、それも完全じゃない。オレだってそうさ。本来なら、あの死体を見てられんのは十数秒が限界だった。化学的処置(ケミカル・アダプテーション)を十秒おきに脳にぶち込んでなきゃ、とてもじゃないがやってられなかったろうな』
言われ、岩代も、すぐにニュースを閉じたことを思い出した。情報とは、得るか、得ないかの二択ではない。その二つの間には、極めて曖昧な領域が横たわっている。だがそうした、少し考えれば発想できるはずのことさえ頭に浮かばなくなるほど、あの死体は、あの死体のCGIは鮮烈だったのだ。
『悪い、無理させたな』
言い、岩代は電車から降りた。そのまま人混みを縫い、ゲートをくぐって駅から出ようとする。
『いいってことよ。こいつは大スキャンダルだ。公表すりゃ社会がひっくり返るぜ』
『そうだな……』
あいまいに答えたところで、ふと、岩代は違和感をおぼえた。
それは生理的な感覚だった。見ている風景、見慣れた人混みに、彼はいわく形容しがたい、奇妙な違和感を覚えていた。
だが、次第にその感覚は鮮明になっていく。それは──「見られている」感覚だった。
尾行されている。彼は、はっきりとそれを悟った。
『……まずいな』
『おい、どうした?』
岩代はそれに答えず、早足で道の方向に向かった。そこには、完全に自動化されたタクシーが停まっている。
「出してくれ」
言い、岩代はデバイスから、予め設定しておいた尾行をまくためのルートをタクシーのプログラムにインプットし、車を出した。それと同時、マクシムに向かって切迫した声で言葉を返そうとする。
『尾行されてる。お前も気をつけろ、こいつは──』
──だが、そこで言葉は途切れた。
正確には、言葉を成立させる合成音声システムがダウンしたのだ。それは、外部との通信が不可能になったことを示していた。
「どうなってるんだ、こいつは……!?」
『ありふれたシステムだよ、君だって、その恩恵に預かったことくらいはあるはずだ』
ふと声が聞こえてきたので、岩代は目を見開いて辺りを見回した。だが、人影はない。どうやら室内のスピーカーから流れている肉声のようだ。
『パトカーにも使われてる技術だ。尤も、パトカーも今や公的機関の独占力の及ぶところではなくなってしまったからな。ある種の設計の施された車にならどれでも、この機能が搭載されているのさ。通信の遮断と──鍵の施錠』
言い終わると同時、岩代は扉に飛びついた。だが「声」が宣言したように、それが開くことはなかった。
『おっと、言われたからって飛びつくのは止した方がいい。このタクシーは時速七十キロで走行中だ。そしてスピードはこれからも上がり続ける。飛び降りたら、いくら君でも無事では済まない』
「なるほど、こいつは名案だ。移動する密室ってわけか」
言い、岩代はシートに深く身体を沈み込ませた。
「お前が〝犯人〟か? 虚構の死体を、虚構の殺人を演出した監督か?」
『詩的だね。だが、それこそ私に相応しい表現かもしれないな』
やや間があってから、「声」は再び口を開いた。
『そうだ。一連の事件は私が演出した。計画、と言い換えてもいい。被害者も、加害者もいない犯罪。それこそが私の目指したものだ』
「……どういうことだ?」
『君とて、考えたことくらいはあるだろう? デジタル情報はすべて等価で、現実も虚構も、等しく扱われると』
「考えたかもな、もっと──小さいときに」
その言葉には明らかに嘲笑の響きがあった。だが「声」は構わず話を続ける。
『……現実と虚構の差は、日増しに小さくなっていく。真実の氾濫だ。だが、その一方で、社会はデジタルの魔法に依存していくようになっている。今やデジタル上で処理できないものはない。高速化され、現実の距離と質量を失った亡霊のような情報たちは、いま・ここを保証する唯一のものとして振る舞う』
「…………」
『君も、その一つだ。君のような細胞が寄り集まって、巨大な〝システム〟を構成する。総監視によって成立する電子網を。監視を実現する眼と、それに従って正義を執行する手(デウス)──そしてそれらを生産し、社会に流通させる人間たち。それらによって成立した、管理・統制された捜査行為。それは今の社会を維持するファクターだが、あくまでも〝表〟の話だ』
「裏があるっていうのか?」
『監視網が整備され、警察の即応性が高まれば、すべての犯罪は白日の下に晒される──多くの者はそう考えている。だが、それは誤りだ。組織的犯罪は、常に陰に潜む。そのことについては君の方が詳しいか?』
その言葉に、岩代は奥歯を噛みしめた。次に何を言われるか、想像がついてしまったからだ。
『君のことは知っているよ、岩代柳。〝情報漏洩〟で免職処分を下された、元刑事──だがそれは、警視庁の権威を失墜させまいとした報道各社の情報戦略の結果にすぎない。君のやったことは〝漏洩〟ではなく〝告発〟だった』
「……昔のことだ。今とは関係ない」
『度々健康被害が指摘されていた、電位偏向型薬剤(ソーマ)を用いた取り調べ──かつての警視庁ではそれが行われていた。もみ消された噂では製薬会社との利権や、事件の早期解決による警察内部でのキャリア・アップ戦略が絡んでいたという話だが……とにかく、君はそれを告発した。それは現在の、民間警察会社が跋扈(ばっこ)する社会潮流を作り出した一因だとも言われているが……どのみち、今の社会は実現していただろう。そして、私の起こした事件もまた、発生していた筈だ。これは必然なのだよ』
「そうやって自己正当化するのか?」
そう言う岩代の額には冷や汗が浮かんでいた。車のスピードは上昇し続けており、既に車窓から見える景色は都市のそれではなくなっていた。車は、海沿いの道を走り続けている。
そんな彼の動揺を余所に「声」は話を続ける。
『随分と下らない価値観に拘泥(こうでい)するんだな。正誤に関わらず社会はそこに在り続ける。だが、適法の精神によって成立した社会が抑圧を生むことは避けられない。ましてこれは監視社会なのだ。──そして、抑圧とは反動の裏面だ。計画された捜査行為の対極には何も広がっていないと、本気で考えていたのか?』
「違うとでも言うのか?」
『管理された捜査行為があるように、管理された犯罪もまた、この社会には存在しうる。そしてそれは、今ここに実現された』
「管理された犯罪……」
『管理され、統制された犯罪。そのためのマニュアル。あらゆる個人が、あらゆる動機が、あらゆる状況が代入可能な犯罪計画。テンプレート、と言った方が正しいかな』
「何を言ってる?」
窓外に目をやりつつ、切迫した響きを伴って放たれた岩代の言葉に、「声」はせせら笑うように言葉を続ける。
『鈍いな、折角解説をしてやっているっていうのに。いいか? フィクションとしての犯罪という、本来何の価値もない悪戯に、実体としての警察が対応することで、そこには保証が生まれるのだ。そうなるとどうなるか──逆転だよ。リアルが転倒し、フィクションがその座を独占する。大衆は、フィクションとしての、鮮烈で強固な犯罪を受容する。制御された現実をな。それは同時に、量産が可能な現実でもある。これからの未来では、あらゆる犯罪がこのテンプレートを通してろ過され、洗練されたものになるだろう。そうして犯罪への認識は、虚構を認識する手管と高度に融合し──組織犯罪、計画犯罪が完全に透明化する。そうなれば我々の天下だ』
「人間を舐めすぎだ。そんなちんけなフィクションに騙されてくれるほど、大衆はバカじゃない」
『現に君は、あの死体の実在を疑ってはいなかったはずだな?』
その言葉に、岩代は苦虫を噛み潰したような顔をした。
『だが結局のところ、未来を決めるのは君でも、私でもない。時がいずれ審判を下すものだ。……長々と付き合わせてしまったな。もう結構だ。さようなら、岩代柳。金輪際、会うこともないだろう』
それを最後に「声」は沈黙した。それと同時、耳を突く、波音の轟音が響き渡った。
──乗っ取られた無人タクシーは、断崖の向こうへと突き進んでいた。
当然のことながら、その先には太平洋が広がっている。車の重量では、一度入水すれば上昇は困難だろう。その上、扉は電子的に施錠されており、車内には満足に脱出用の道具も揃っていない。トラブル防止のために排除されているのだ。
車は超高速で、断崖から飛び出した。
「くそ……ッ!」
毒づき、岩代は目をつぶろうとして──ふと、窓の外にあるものを見た。
それと同時、彼は扉に駆け寄った。だがそれは、脱出を目的としたものではない──その目的は「回避」だった。
次の瞬間、轟音とともに、彼の反対側の扉が吹き飛んだ。
機銃掃射。それが、戦闘行為など想定もしていない乗用車の扉を吹き飛ばすことなど、わけないことだ。
それを見るや、彼は車の外に大きく跳躍した。そして、それに飛びつく。空中に浮かぶ──マクシムのスカイクラフトに。
「ギリギリセーフだな!」
ハッチから車内に入った岩代に、マクシムは叫んだ。
「助かったよ、マクシム」
「咄嗟にあんたが端末の情報プロテクトを切っておいてくれたお陰だ。消失点から、タクシーの進路を割り出すことができた」
「来てくれるとはな……」
「まあ、大事な顧客のためなら何だってやる。……しかし……こりゃとんでもねえ大事だな。相手は何だ、どの組織だ? ひょっとして──」
「安心しろ、国は絡んでない。だが──ちょっとばかし荒れることになりそうだ」
言い、岩代は連絡を開始した。拡張表示の隅に出現したウィンドウには、UP社の連絡窓口の番号が記されている。
─◇◆◇─
その男は、その日も東京都西部に本社を構えるゼネコンのビルへと向かっていた。国道沿いに、ひっそりと建つビルだ。
彼は会社の前に停めさせたタクシーから降りると、ロビーに向かって歩き出した。──と、ふと、その行く手を阻むものがあった。
「あんたのこと、調べさせてもらったよ、道長剛(みちながつよし)さん」
それはロングコートを羽織った、三十代後半ほどの男──岩代柳だった。
「だ、誰だ、君は?」
男──道長と呼ばれた男は、明らかな動揺の表情を浮かべつつ、彼を抜き、ビルへと入ろうとした。だがそれはできなかった。岩代の後ろには、防弾装備を整えた大柄の戦闘員たちが複数控えていたからだ。その脇には、デウスも控えている。
──それが私警(プライベートポリス)の実働部隊であることは、彼にも分かった。
「道長剛。企業相手の依頼を中心に受けている弁護士だな。フリーだが、最近はその後ろの、北野建築の仕事を受けてる──尤も、最近はその数も減っているようだが」
「興信所か? べらべらと、随分と迂闊なことだ。私は君たちをストーカー規制法違反で訴えることもできる」
その言葉は無視し、岩代は話を続ける。
「企業相手の依頼、と言うと聞こえはいいが、その実態は暴力団、あるいはそのフロント企業の洗浄(ロンダリング)や圧力用のスラップ訴訟を担う、法曹界での傭兵だ。だが──なにせフリーだからな。競合が多く、仕事を取るのも楽じゃないんだろう?」
「…………ッ!」
道長は奥歯を噛みしめた。苦虫を噛み潰したような表情で、地面を睨み付ける。
「だからあんたは、その権威を絶対のものとするために、まず自分を脅かす警察を排除──いや、制御しようとした。そうして、そのノウハウを売り込むことで、業界におけるイニシアティヴを取ろうとしたんだ。それが成功すりゃ、あんたはちんけな弁護士など超越した裏社会の帝王(ゴット・ファーザー)になれるからな。現状打破の手段としちゃ最善に見えたんだろう」
「……妄想だ!」
道長の反駁(はんばく)に、岩代は首を振った。それはどこか、呆れているようでもあった。
「いい加減認めたらどうだ? あんたを探すのには苦労したよ。だが──追跡不可能な人間はいない」
「ぐ……」
長い間を置き、道長はやがて顔を上げた。
「き、聞かせてくれ。なぜ……私のことが分かったんだ? 監視の位置と情報はすべてチェックしておいたはず……」
「まあな。だが、システムに頼りすぎて、人間のインスピレーションの方は顧みなかったようだな」
その言葉に、道長は訝しげな表情をした。
「どういうことだ……!?」
「旅行会社さ。水路をフェリーで遊覧するコースを提供してるやつだ。あんた、下見をしただろ、現場の。どの辺りで事件を起こせば、報道初期の段階で大衆や、捜査関係者に事態の真相を悟られないか──それを考案するためには、どうしたって外に出る必要がある。実地に行って、確かめておく必要がな」
「だ、だが……旅行会社など珍しくもない……その中から、どうやって私を……」
「見つかるまい、と躍起になって、小規模な会社を選んだのが仇になったな。あの辺りを遊覧してるスカイクラフトやらボートやらは、どんな会社のものであれ目立つ。おまけに、そういった機体の側面には決まって企業のロゴが刻印されている。消費者に記憶してもらうことを目的にデザインされたロゴが。後は近辺の住人に聞き込めば、ある程度は絞り込める。そして小規模な会社を対象にすれば、更にその範囲は限定される。後は根気だな」
「……くそったれ」
毒づき、道長はうなだれた。
「大した名推理だよ、全く……」
それを聞き終わるや、戦闘員の一人が彼に手錠をかけた。それで、デウスが確保時刻と、協賛企業を読み上げる。──任務終了。デジタルの眼が、口が、それを告げていた。
「まだだ……まだ終わってない」
ふと、道長が口を開いた。
「私のノウハウは、いずれ誰かが引き継ぐだろう……この世界がデジタルの魔術に、呪いに呑まれ続ける限り、この連鎖は、破局の予感は続くことになる──」
「説教は署で聞く。言い分もな。弁護士ならそこを弁えろ」
言い、岩代は実働部隊を先導して、犯人(・・)を車に乗せた。
─◇◆◇─
後日。岩代柳への殺人未遂を含む複数の罪で、道長剛は起訴された。報道の正確性や、民間警察機構などがまとっていた信頼性といった、社会を維持するうえで必要不可欠な公共性が著しく侵害された事件の割に、彼への処罰は驚くほど軽いものとなった。だが、あるいは法律とはそのようなものなのかもしれなかった。
しかし世間はそうではなかった。報道各社から井戸端会議に至るまで、あらゆる人間はそのことについて話していた。事件から一週間。破壊されたものは透明の、しかし確実にそこにある、根深く莫大なものだった。
「…………」
岩代は事務所の窓から、朝靄に霞む東京の街を眺めた。
蜃気楼のような都市は、澱のような静謐の中で、わずかに打ち震えたように見えた。