ある日、古いエスエフ映画をあなたと見に来ていた。
未来の世界を舞台にした何十年も前の海外の映画。すでに世界は汚染されてしまっていて、マスクなしじゃ肺がただれてしまう。まるで未開の惑星みたいなうす暗い地球。
そんな世界で逃げ込んだ先は八万平方キロメートルの都市。昔はシェルターと呼ばれていた。
そこに存在する人工太陽、人工植物。そもそも人口物じゃないものなんて存在しない。
ほぼ人間と変わらない存在のロボット。誰もそれには疑問は抱かない。殺人、略奪。安維持もなく、力は力でしか人々は抗うことができない。犯罪の五割はロボットたちの手によって行われていた。
そんな世界で、科学の飽和を憎む主人公が立ちあがる。
前時代の映像もほどほどに徐々に核心に迫る物語。
だが実は彼もロボットってのがその映画のラストカット。
終盤、セリフが聞こえ始めた。
この世界だって、誰かの創作かもしれない。見ているこの世界も、誰かの悪意かもしれない。
当たり前にある景色も大事にしなきゃって思うでしょ。
この世界に不必要なのは人類だって話もあるよ。
説教じみた話じゃつまらない? わかってるだからこそ感じて、経験は何よりも饒舌で、そしてそれを忘れちゃいけないよ。
草木に宿る安堵の情念。昔の人は神様と呼んだ。
ほら触れてみなよ。このぬくもりを何と呼ぶ?
自分の胸のあたりがなぜかうずくようであった。
まだ声はあたりに響いている。
人が人である理由が、人の中にしかないのなら、「こころ」と呼ぶんでしょう。
そこだけは、明け渡さないでね。
どう? 理解できたかな。これが人類の原風景。
一瞬の空白がこの空間を支配した。
「上映はこれにて終了です」
大きな声が響く。
「保護服とマスクを忘れずに、では手元のモニターでご確認をお願いいたします」
そこには、大きく都市汚染予報とテロップが流れた。
僕は、椅子に深くもたれかかって想像する。
僕らが愛した故郷が壊されてしまうかもしれない。待っていた未来だって誰かの筋書きかもしれない。
隣で君は不安そうな顔を浮かべている。
これからどうなるかなんて君は僕にきくけれど、答えは君自身が決めなくちゃ。
僕は名もないロボットだからさ。